17- D- 0174
201 7 年
5 月
3 1 日
倉庫各社の 17/ 3 期決算の
注目点
倉庫各社(三菱倉庫、三井倉庫ホールディングス(三井倉庫
HD)
、住友倉庫、澁澤倉庫、東陽倉庫、中
央 倉 庫 、 安 田 倉 庫 の
7
社 ) の
17/ 3
期 決 算 お よ び
18/ 3
期 業 績 予 想 を 踏 ま え 、 株 式 会 社 日 本 格 付 研 究 所
(J C R)の現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1. 業界動向
倉庫各社の主力となる物流事業の環境は荷動きに改善傾向がみられるものの、依然競争が激しく、厳しい
状 況 が 続 い て い る 。 日 通 総 合 研 究 所 の 企 業 物 流 短 期 動 向 調 査 を み る と 、 荷 動 き 指 数 (
「 増 加 」 の 割 合 か ら
「減少」の割合を引いたもの)は 14 年 4∼6 月以降、12 四半期連続のマイナスと依然低迷が継続している。
国内景気の緩やかな回復を背景にマイナス幅が縮小しつつあるものの、17
年
4∼6
月の同指数もマイナス予
想で回復の足取りが鈍く、事業環境の先行きについては楽観視できない。
不動産事業の環境については三鬼商事が公表している「最新オフィスビル市況」によると改善傾向が継続
している。東京ビジネス地区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)のオフィス平均空室率は、17 年
3 月末時点で 3. 6%(前年同月実績 4. 3%)
、同じく平均賃料は 18, 730 円/坪(同 17, 973 円/坪)となった。
ただ、倉庫各社の賃貸物件は倉庫跡地を再開発して建設されたものが主体で、オフィスや商業地域の一等地
から外れた地域にある物件も多い。東京の一等地のような賃料水準の回復には至っておらず、当面その傾向
に変化はないと考えられる。
2. 決算動向
倉庫 7 社の 17/ 3 期営業利益(単純合算)は 362 億円(前期比 11. 9%増)と 5 期ぶりに増益へ転じた。個
社別でみると住友倉庫を除く
6
社で増益となった。6
社については総じて倉庫、陸上運送及び港湾運送で取
扱量を伸ばすなど主力の物流事業が堅調であった。特に、三菱倉庫は医薬品、澁澤倉庫は日用品や飲料など
それぞれの得意分野で増やすことができた。安田倉庫は
16/ 3
期に取得したメディカル物流ユニット東京物
流センターの稼動や大型設備輸送などの増加が利益を押し上げた。また、近時業績が振るわなかった三井倉
庫
HD
も
16/ 3
期に子会社化した丸協運輸グループの通期寄与などにより増益へ転じた。一方、住友倉庫は
強みとするアーカイブズ事業を拡大させることができたものの、海運事業が市況低迷を背景に営業赤字に陥
り、全体収益を圧迫した。
親会社株主に帰属する当期純利益は一部を除き、黒字基調を維持している。三井倉庫
HD
のみ
17/ 3
期
234 億円の赤字(16/ 3 期
2 億円の黒字)となった。当社は新たな事業領域を拡大するため、近年
M&A
や設
備投資を積極化してきたが、十分な成果を上げることができていない。子会社三井倉庫ロジスティクスや三
井倉庫サプライチェーンソリューションなどを中心に減損損失の計上を余儀なくされ、特別損失
255
億円を
計上した影響が大きかった。
前 期 に 続 き 、 決 算 発 表 と 併 せ て 中 期 経 営 計 画 を 更 新 す る 企 業 が み ら れ た 。 住 友 倉 庫 は 中 期 経 営 計 画
(2017- 2019
年度)- チャレンジ
120- を発表した。財務の安定性を堅持しつつ、更なる事業基盤の強化を図
ることで持続的な成長を目指し、最終年度の営業利益
120 億円(17/ 3 期
91 億円)を目標としている。一方、
澁澤倉庫は中期経営計画「Step Up 2019」を策定。国内物流事業における消費財物流の拡充と高付加価値業
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http://www.jcr.co.jp/
表分も含め、各社の中期経営計画では既存事業を強化、拡充していくことが主体となっている。各社とも一
定の財務規律を維持するとみられ、財務構成はしばらく安定的に推移していくと J C R ではみている。
18/ 3 期の営業利益(単純合算)は 377 億円(前期比 4. 2%増)と 2 期連続の増益計画である。個社別でみ
ると、三菱倉庫、東陽倉庫及び中央倉庫は厳しい環境下とはいえ、利益が底堅く推移していく見込みである。
三井倉庫
HD
はのれん償却費の減少、住友倉庫については海運事業の持ち直しで増益を予想している。澁澤
倉庫では業務システム開発費用の負担があるものの、日用品や飲料の取扱増加などにより、前期並みの利益
水準を維持する計画である。他方、前期堅調であった安田倉庫は伸び悩む見通しである。修繕費の増加や新
施設竣工に伴う租税負担が利益を圧迫するとみられる。
財務面では 17/ 3 期末の自己資本比率(7 社合計)49. 3%(前期末 49.2%)と大きな変動はなかった。個社
別でみると三井倉庫
HD
を除く
6 社は概ね安定していた。中でも三菱倉庫、住友倉庫、中央倉庫、安田倉庫
は良好な水準を、澁澤倉庫は改善基調を維持している。三井倉庫 HD については、17/ 3 期の最終赤字により
自己資本を大幅に毀損させ、自己資本比率が 16/ 3 期末 21. 6%から同期末 14. 1%まで低下した。
3. 決算に
お
け
る
格付上の
注目点
業界全体の格付の方向性は当面安定的である。ただし、投資拡大または回収局面、事業再建など各社が取
り組んでいる施策や直面している課題には差があり、注目点は以下の通りである。
物流事業の収益動向が注目される。近時示された中期経営計画の利益目標達成においては物流事業の強化
が鍵となっている。三菱倉庫や安田倉庫は投資拡大で中期的な収益力強化を図っている。三菱倉庫ではイン
ドネシアや兵庫県の配送センターの建設工事を、安田倉庫では中国や福岡県の倉庫建設を進めている。また、
ここ数年格上げを実施した住友倉庫や澁澤倉庫は、過年度の投資や施策の成果が収益力の向上につながって
おり、引き続き物流事業強化の進捗状況をフォローしていく。なお、住友倉庫については前期悪化した海運
事業の回復状況も確認していく。他方、不動産再開発の動向にも注意を払いたい。不動産事業は各社利益の
下支えとして貢献している。足元では安田倉庫が横浜駅前の鶴屋町、東陽倉庫が名古屋市内の納屋橋東地区
の再開発を手掛けている。今後本格稼働が見込まれ、不動産事業の収益回復度合いに注目していく。
収益成長を図るうえで、投資拡大や
M&A
実施などに伴う財務面への影響度合いを注視していくことも必
要である。各社とも総じて、一定の財務諸比率を維持しつつ投資を行っていくと J C R
ではみている。ただ、
安田倉庫については 17/ 3 期から 19/ 3 期に総額 240 億円に及ぶ設備投資(前中期経営計画の 2 倍)を計画し
ている。積極的な投資計画を背景に一定の財務負荷がかかる見込みであり、投資回収の進捗をフォローして
いく。また、J C R
では三井倉庫
HD
の格付を
16 年
7 月に「A 」から「A - 」へ、17 年
4 月に見通しを「安定
的」から「ネガティブ」へ変更した。自己資本の毀損など財務リスクが顕在化しており、財務基盤の改善が
課題となっている。当社では今期中に抜本的な事業収益力の強化とともに、財務基盤の再建を中心とした中
期経営計画を公表するとしている。計画の内容及び実効性を精査し、格付に反映していく方針である。
(図表 1)倉庫 7 社の連結業績の推移
(単位:億円)連結 物流 不動産
営業収益 営業利益 営業収益 営業利益 営業収益 営業利益
三菱倉庫 (9301)
15/ 3 期 2, 043 114 1, 704 72 359 91 16/ 3 期 2, 068 113 1, 690 55 398 106 17/ 3 期 2, 087 127 1, 679 66 428 117 18/ 3 期予 2, 120 129 1, 769 83 373 100 三井倉庫
(9302)
15/ 3 期 1, 704 61 1, 605 35 104 58 16/ 3 期 2, 129 32 2, 038 21 96 49 17/ 3 期 2, 255 58 2, 167 44 94 50 18/ 3 期予 2, 250 65 2, 165 55 90 50 住友倉庫
(9303)
15/ 3 期 1, 747 93 1, 666 97 89 36 16/ 3 期 1, 722 107 1, 631 107 100 45 17/ 3 期 1, 652 91 1, 562 94 101 45 18/ 3 期予 1, 700 106 1, 604 107 106 51 澁澤倉庫
(9304)
15/ 3 期 550 26 494 15 57 27 16/ 3 期 567 27 510 16 57 26 17/ 3 期 580 34 524 23 56 27 18/ 3 期予 597 33 541 55
東陽倉庫 (9306)
15/ 3 期 231 7 227 12 3 0 16/ 3 期 248 7 244 12 3 1 17/ 3 期 258 8 255 14 2 0 18/ 3 期予 260 9
中央倉庫 (9319)
15/ 3 期 235 13 235 13 16/ 3 期 238 15 238 15 17/ 3 期 247 15 247 15 18/ 3 期予 252 16 252 16 安田倉庫
(9324)
15/ 3 期 384 22 328 21 60 18 16/ 3 期 387 19 339 20 52 16 17/ 3 期 406 25 357 27 53 15 18/ 3 期予 427 18
7 社合計 15/ 3 期 6, 897 340 6, 262 267 676 232 16/ 3 期 7, 362 323 6, 694 249 708 245 17/ 3 期 7, 487 362 6, 794 287 737 257 18/ 3 期予 7, 606 377
4/ 5
http://www.jcr.co.jp/
(図表 2)倉庫 7 社の財務指標の推移
(単位:億円、%、倍)13/ 3 期 14/ 3 期 15/ 3 期 16/ 3 期 17/ 3 期
三菱倉庫 自己資本 2, 258 2, 344 2, 605 2, 549 2, 742 有利子負債 588 729 770 709 655 自己資本比率 60. 2 59. 2 60. 2 61. 7 63. 0 有利子負債/ EBI TDA 2. 22 2. 72 2. 82 2. 58 2. 35 デットエクイティレシオ 0. 26 0. 31 0. 30 0. 28 0. 24 三井倉庫 自己資本 547 626 682 616 377 有利子負債 1, 340 1, 115 1, 263 1, 607 1, 688 自己資本比率 23. 5 28. 4 27. 8 21. 6 14. 1 有利子負債/ EBI TDA 9. 41 7. 43 8. 21 10. 53 9. 46 デットエクイティレシオ 2. 45 1. 78 1. 85 2. 61 4. 48 住友倉庫 自己資本 1, 337 1, 470 1, 641 1, 618 1, 710 有利子負債 684 798 735 786 723 自己資本比率 50. 7 50. 9 54. 2 53. 8 55. 9 有利子負債/ EBI TDA 3. 62 4. 28 3. 89 3. 78 3. 75 デットエクイティレシオ 0. 51 0. 54 0. 45 0. 49 0. 42 澁澤倉庫 自己資本 334 351 386 386 408 有利子負債 379 375 384 362 361 自己資本比率 38. 4 38. 6 39. 5 42. 3 42. 9 有利子負債/ EBI TDA 6. 83 7. 11 6. 89 6. 35 5. 67 デットエクイティレシオ 1. 13 1. 07 0. 99 0. 94 0. 89 東陽倉庫 自己資本 160 161 169 168 178 有利子負債 146 139 129 135 135 自己資本比率 43. 4 42. 3 44. 1 45. 0 45. 9 有利子負債/ EBI TDA 7. 87 6. 61 6. 13 6. 55 6. 09 デットエクイティレシオ 0. 91 0. 86 0. 77 0. 80 0. 76 中央倉庫 自己資本 325 330 345 348 365 有利子負債 37 40 37 46 42 自己資本比率 81. 6 81. 7 81. 3 80. 1 80. 7 有利子負債/ EBI TDA 1. 42 1. 63 1. 39 1. 60 1. 40 デットエクイティレシオ 0. 11 0. 12 0. 11 0. 13 0. 12 安田倉庫 自己資本 488 624 651 604 609 有利子負債 249 256 233 251 247 自己資本比率 52. 2 54. 5 56. 9 56. 0 55. 8 有利子負債/ EBI TDA 4. 88 5. 22 4. 62 5. 20 4. 34 デットエクイティレシオ 0. 51 0. 41 0. 36 0. 42 0. 41 7 社合計 自己資本 5, 452 5, 908 6, 482 6, 292 6, 391 有利子負債 3, 426 3, 455 3, 555 3, 901 3, 855 自己資本比率 48. 3 49. 6 50. 9 49. 2 49. 3 有利子負債/ EBI TDA 4. 58 4. 59 4. 61 4. 93 4. 68 デットエクイティレシオ 0. 63 0. 58 0. 55 0. 62 0. 60 (出所:各社決算資料より J C R 作成)
【参考】
発行体:三菱倉庫株式会社
長期発行体格付:A A 見通し:安定的
発行体:三井倉庫ホールディングス株式会社
長期発行体格付:A - 見通し:ネガティブ
発行体:株式会社住友倉庫
長期発行体格付:A A - 見通し:安定的
発行体:澁澤倉庫株式会社
長期発行体格付:A - 見通し:安定的
発行体:東陽倉庫株式会社
発行体:株式会社中央倉庫
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
発行体:安田倉庫株式会社
長期発行体格付:BBB+ 見通し:安定的
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